『利休にたずねよ』 山本 兼一 著
以前テレビを見ていたら茶道の先生みたいのが出てきて”ちゃどう”と発音していました。
あれ?茶道って”さどう”じゃないの?
ちょっとショックを受けたのですが(高校の茶道部はサドウブだったよな)
どうやらお茶の流派によって”さどう””ちゃどう”と呼び方が変わるようです。
言葉の専門家集団であるNHKでもちゃんと使い分けをしているようですよNHK気になることば
具体的には裏千家が”ちゃどう”で
表千家が”さどう”のようです。
まったく茶道には縁のない私にとっては裏も表も区別がつきません
さて今回このブログでご紹介させていただくのは
この茶道を広めた千利休が主人公となっている
山本 兼一氏の『利休にたずねよ』です。
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利休にたずねよ
著者:山本 兼一 |
この作品は第140回直木賞の受賞作ですね。
(もう1点は『悼む人』天童荒太氏)
特に直木賞受賞作ということで読んだのではなく今回は、このタイトルに惹かれました。
何か意味深なタイトルですよね!
堺の商人の家に生まれた利休(幼名 与四郎 法名は宗易)は幼いころから茶の世界に心引かれやがて秀吉のもとで重用され茶聖として後世に名を残しています。
侘び寂びで有名な利休ですが利休の若いころのお茶の世界は豪華絢爛な高貴な身分の人々の趣味のものだったようです。
それが利休等(別に詫び寂びの世界は利休が流行らせたわけではないようです)によって庶民まで楽しめるように普及したようです。
その結果、有名な北野大茶会といった秀吉や大名、宮家、豪商から一般庶民までが参加するような一大イベントまで開催されるようになります。
そんな秀吉の傍に仕えていた利休はやがて秀吉により切腹を命じられ武士でもないのに自ら命を絶つこととなりました。
この利休切腹については現在でも謎多き歴史上の事件として語られています。
これは読む”詫び寂び”?
この作品では利休切腹の謎についてはっきりした答えを出しているわけではなく絶対的な美を見極める選美眼を持っていたといわれる利休の人生を切腹場面から時代を少しずつ遡り利休の美の根源となったある出来事までを描いています。
それぞれ利休を語る上で必ず出てくる有名なシーンです。
(もっとも若いころのエピソードだけは作者の創作)
橋の欄干の同じように作られた多くのギボシ、あるいは庭の数ある壊れた灯篭の中からでも一つだけ”誰もが認める最も美しいもの”を見つけることができたといわれる利休。
絶対音感ならぬ絶対美感ともいうべき利休の選美眼。
美に対する意識(目利き)については当代一を自負していた利休と天下統一を果たした秀吉のプライドとプライドが衝突し少しずつ二人の天下人の関係がほころび出してついに利休が死を賜ることとなったのでは?
先日放送された「世界ふしぎ発見!」のテーマは”利休と秀吉”でした。
この作品「利休にたずねよ」のヒットと連動した実にタイムリーなテーマだと私も感心して観ていました。
番組中に作者の山本兼一氏も登場して
”詫び寂の茶の世界といわれる利休が愛した道具の品々を一つ一つ眺めると実は決してどれも詫びても寂びてもいない美の一級品ばかりだ”と自らが抱いた感想と違和感がこの作品を書くきっかけだっと語っていました。世界ふしぎ発見!バックナンバー
『利休と秀吉 茶の湯に秘められた歴史ミステリー』(第1100回放送)
私にとっては久しぶりの長編歴史小説で”さすがに直木賞”と感じさせる深くて味のある作品でした。
こうした作品がベストセラーになっているのって”何だかいい傾向”を感じさせてくれます。
過去へと遡って進行する形式がなかなかユニークでした。
堅苦しい歴史小説とは違い最近流行の歴女さんたちにも受け入れられる秀作だと思います。
(だからこれほどまでに売れているのでは?あるいは茶道界の動員もあるのかな?)
ところで茶道を習っている人は当然このような利休の生涯についてはどのくらい知っているのかなぁ?
以上 幼いころは一休さんも利休も区別がつかなかった青い森のよっちんでした。
参考サイトあの人の人生を知ろう~千利休~
茶道のみちしるべ(茶道と千利休について)
裏と表の他にも・・・・(三流派のことも)
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